低い稼働率の実態
そんなP-1の開発は2000年から始まり、2013年には部隊へ配備されるも、耐久試験で機体や部品にヒビが入り、似た不具合を抱えていたC-2輸送機とともに、「失敗作」「欠陥」との評価を受けました。
その後、改修で機体の強度不足は直り、配備以降も大きなトラブルはないですが、いろいろ問題点が判明しました。会計監査院の調査によると、塩害でエンジンの腐食が進み、低い稼働率につながっていたそうです。
さらに、設計ミスで一部の武器を搭載できず、電子機器の不調、部品不足にも悩み、低調な稼働率に拍車をかけています。
いまや哨戒任務に欠かせないものの、その開発が拙速だった感は否めず、不具合と稼働率の低さを考えると、一定の批判は仕方ありません。技術立国の日本といえども、航空機の国産開発は難易度が高く、特にエンジン周辺が苦手とされるなか、今回はその影響が出た形です。
一方、なかなか予算が下りず、それが部品不足と未改修につながり、この点は会計監査院も関わっています。会計監査院の仕事とはいえ、予備部品の購入に注文を付けたり、予算内容を精査しすぎた結果、稼働率低下の一因になりました。
方針転換で調達削減
結局のところ、自衛隊の組織改編・方針転換にともない、調達数は70機から60機まで減り、その一部は無人機「シー・ガーディアン」で代替します。
ただ、これはコストや人員不足の要因が強く、陸上自衛隊も攻撃ヘリ部隊をなくすなど、防衛省全体で無人機シフトが顕著です。部品共通化でコストを抑えたとはいえ、P-1の単価は約200億円と安くはなく、艦艇要員さえ確保できない海自にとって、航空部隊の現状維持はできません。
海外輸出は失敗(出典:海上自衛隊)
コストについていえば、P-1は国際的な航空ショー・展示会に加わり、海外輸出による単価の抑制を目指しました。残念ながら、日本は輸出実績がない以上、海外の防衛装備品には太刀打ちできず、興味を示した国も最終的にはP-8を選びました。
問題点はあれども、P-1自体の廃止は可能性が低く、有人哨戒機の必要性が消えたわけでもありません。むしろ、2040年代に向けた次期哨戒機の話が出ていて、川崎重工業がすでに開発検討を始めたようです。

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