過酷な選抜と地獄の訓練
特別警備隊は先陣を切って殴り込み、非常に危険なミッションに挑むため、給料面では「特別警備隊員手当」が支給されるなど、一般的な海上自衛官の1.5倍以上はもらえます。
その反面、極限状態にも耐えられる体力や精神力、危険に対処できる判断力と機転のよさが欠かせません。
では、特別警備隊に入るにはどうしたらいいのか?
まずは、海上自衛隊への入隊後、毎年の募集に手をあげねばならず、その募集要項は以下のとおりです。
- 階級:3等海曹以上
- 年齢:30歳未満
- 優秀な射撃能力・運動能力(特に水泳)
- 強靭な精神力と高い知能
あくまで階級・年齢は原則になり、満たさずとも応募はできます(選考突破は厳しいが)。応募時の職種制限もなく、後方勤務でも募集自体はできますが、実際には警務隊や水中処分隊(機雷)の出身者が多いそうです。
選考過程では筆記試験と体力テスト、面接に全て合格せねばならず、その後は江田島の第1術科学校で「特別警備課程」という2年コースに入り、ひたすら以下のような訓練を受けます。
- ゴムボートを使った強襲
- ヘリによる降下強襲
- 水中潜入・水路潜入
- 野戦戦闘、近接戦闘、格闘戦闘
- 陸上自衛隊・第1空挺団での空挺降下
- 米海軍ネイビーシールズでの研修
立入強襲、武装解除が基本とはいえ、少数による地上戦も想定されており、イラクで起きた邦人の人質事件(2006年)では投入計画があったそうです。
ちなみに、個人装備は自衛隊共通の「89式小銃」のほか、世界各国が使う「HK416」や近接戦闘に向いた「MP5」を導入しました。
訓練中の特別警備隊員(出典:アメリカ軍)
厳しい訓練を乗り越えてこそ、特別警備隊の徽章(バッジ)を獲得できるわけですが、このような特殊訓練は陸自のレンジャー課程と同じく、一歩間違えると死亡事故につながりかねません。
また、2008年には退学希望者にもかかわらず、訓練生が15人連続の格闘訓練を行い、死亡する過失事件も起きています。このとき、隠蔽疑惑で批判されたり、調査内容の開示が進まず、特別警備隊の歴史に汚点を残しました。
海保にもある特別警備隊
余談ながら、海上保安庁にも「特別警備隊」という部隊がありますが、こちらは海自のような特殊部隊ではなく、あくまで港湾警備用の船舶部隊です。
ただ、海保も不審船などに対処すべく、「特殊警備隊(Special Security Team)」なる特殊部隊を持っています。海自の特別警備隊と同じ海を守り、共同訓練を実施するなど、両者は連携協力を進めてきました。
あえて違いを言うならば、海保は暴力団や密輸のような刑事事件に取り組み、海自は工作員やテロリスト、ゲリラなどに対処します。さはさりながら、その線引きは必ずしも明確ではなく、両者の対処範囲が被るケースも多いです。

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