宇宙船も?知られざるアメリカ宇宙軍の役割や装備とは

アメリカ宇宙軍のロゴマーク アメリカ
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宇宙領域での軍事活動

さて、新しい宇宙軍の役割は「宇宙に対する攻撃・宇宙からの攻撃を防ぎ、アメリカの国益と安全を守ること」です。

すなわち、軍事面での宇宙活動を引き受けるわけですが、実際には宇宙ゴミ(スペースデブリ)の監視が主な仕事になります。

スペースデブリとは用済みの人工衛星とその残骸で構成されるもので、衛星の打ち上げ数が増えるにつれて表面問題化しました。大きさ1cm以上のゴミだけで70万個もあると言われており、宇宙空間における最大脅威となっています。

たかが1cmの金属片といえども、地球を周回するその速さは秒速8kmにも達するため、稼働中の人工衛星に当たれば大事故につながります。

よって、宇宙軍は地上レーダーを使いながら24時間体制で監視しつつ、スペースデブリと人工衛星の衝突回避に努めねばなりません。

衛星システムは軍事作戦を遂行するうえで欠かせず、何らかの理由で機能不全に陥れば、世界最強の米軍も無力化されかねません。しかも、米中のような大国同士が戦う場合、自国の衛星を守れるかどうかが戦局を大きく左右するでしょう。

さらに、人工衛星群のなかには攻撃機能を持つ「キラー衛星」が密かに混じっているとされています。

すでに中国とロシアがキラー衛星を運用している疑いがあって、アームを伸ばして相手の人工衛星を物理的に壊したり、電磁波を照射するそうです。こうしたキラー衛星の奇襲を防ぐには、これらをあらかじめ特定しておかねばなりません。

ほかにも、対衛星ミサイルや弾道ミサイルの発射を捉える警戒部隊、偵察衛星で情報収集するインテリジェンス部隊などが宇宙軍に所属しており、全体で70基以上の軍事衛星を運用しています。

宇宙軍の「船」は地味?

ゴミの監視という地味な仕事をこなす宇宙軍ですが、じつは宇宙船も運用しています。

ただ、宇宙戦艦のような存在はなく、ボーイング社が開発した「X-37B」という2機の無人宇宙船を使って衛星軌道上での長期間飛行や大気圏再突入の実験を繰り返しています。

この宇宙船は270日間以上の宇宙飛行と再利用ができ、1号機・2号機を合わせて5回の実験を行ってきました。特に1号機は2022年11月に908日間もの飛行を終えて帰還するという新記録まで樹立しています。

実験では次世代宇宙船の開発に向けたデータ収集、そして宇宙で得た太陽光エネルギーの地上送電などを試しているものの、活動内容のほとんどは謎のままです。

中国やロシアからは「攻撃能力の研究」という疑いが向けられているなか、X-37B自体の搭載量は兵器として用いるには足りず、宇宙からの攻撃に有翼宇宙船を使うメリットはあまりありません。

宇宙兵器を使うならば、わざわざ目立つ宇宙船ではなく、中露と同じようにキラー衛星を秘密裏に運用した方が合理的です。

宇宙軍で運用されているX-37B宇宙船(出典:アメリカ宇宙軍)

すでに宇宙船まで持っているアメリカ宇宙軍は、その重要性が今後さらに増すなかで、優位性確保に向けて同盟諸国との連携強化も目指します。

この中には日本も含まれていて、新たに「在日宇宙軍」を創設して航空自衛隊の「宇宙作戦群」との協力を深める一方、「インド太平洋宇宙軍」「在韓米宇宙軍」も続々と発足させました。

インド太平洋宇宙軍の傘下として横田基地にある在日宇宙軍は、空自とJAXAとの連携のみならず、対北朝鮮における日米韓3ヶ国の情報共有能力を向上させると期待されています。

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