それでも足りない?海上自衛隊・護衛艦54隻体制への増強

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米海軍を支援する役目

海上自衛隊の主任務とは何でしょうか?

もちろん、日本の海を守ることですが、これには沿岸警備からシーレーン防衛、敵部隊の上陸阻止などが含まれます。しかし、日本の防衛自体がアメリカの来援を前提としているため、有事での主な役割は米海軍を日本付近まで護衛することでした。

だからこそ、海自は打撃力よりも対潜・掃海能力を高めてきた経歴を持ち、それは「アメリカ第7艦隊の補助部隊」と言われたほどです。

共同訓練を行う日米連合艦隊(出典:海上自衛隊)

しかし、これは対潜・掃海分野は任せられるという裏返しでもあり、本来の役目を考えれば、的を得ていたといえます。

もちろん、対中国に向けて海自は打撃力を高めていて、単独での作戦遂行能力もそれなりに確保しました。それでも米軍のアシストという本質は変わっていません。

54隻体制と艦隊再編

さて、海上自衛隊は冷戦期を通して、護衛艦8隻・哨戒ヘリ8機からなる護衛隊群(いわゆる「新八八艦隊」)を4つ整備してきました。「こんごう型」イージス艦の就役でこの艦隊編成はひとまず完了したものの、すでに冷戦は終わり、仮想敵のソ連も崩壊していました。

冷戦終結後の軍縮機運を受けて、護衛艦の定数は50隻から47隻に削減されますが、中国海軍の急拡大が問題視されると再び増加傾向に転じます。

現在は2013年の防衛大綱(25大綱)に基づく54隻体制を完成させながら、「もがみ型」フリゲートの量産により、人的資源と増える任務を両立させる形です。

この改編がもたらしたのは単なる定数増加ではなく、主力の護衛隊群と沿岸警備を担当する「2桁護衛隊」の関係性も変わりました。従来の構図では機動艦隊の前者には新型・大型護衛艦がそろっていた一方、後者には小型艦や旧式艦があてがわれていました。

このように改編するはずだったが・・・

ところが、25大綱では2桁護衛隊の数を5個から6個に増やすとともに、護衛隊群と同じく機動運用することになりました。そして、最新の30大綱(2019年)では「もがみ型」のような新型艦を配備したうえで、機雷・掃海作戦と水陸両用作戦を支援する部隊に分けるつもりでした。

護衛隊群→水上戦群

こうした動きのなか、2024年には再び大規模な方針転換を決めました。

今度は水上艦艇を統括する護衛艦隊そのものをなくして、新たに「水上艦隊」に改編される予定です。その下にあった護衛隊群は「水上戦群」へ、2桁護衛隊は「水陸両用戦・機雷戦群」「哨戒防備群」に変わります。

海上自衛隊の組織図

特に4つの護衛隊群がなくなり、3つの水上戦群になるのは大きく、半世紀以上ぶりの大変革です。おそらく、イージス艦や汎用護衛艦は水上戦群に、フリゲートや掃海艇は水陸両用戦・機雷戦群に、そして哨戒防備群には新たに建造される哨戒艦を集めるのでしょう。

このように定数増加に加えて、艦隊編成がガラリと変わったのが近年の特徴です。

次の汎用護衛艦はどうする?

定数増加や艦隊再編で柔軟性・対処能力を高めるつもりですが、それでも現状では人も船も足りていません。

解決策のひとつである「もがみ型」「改もがみ型」フリゲートは、総合性能では汎用護衛艦に劣りながらも、多目的能力や省人化、量産化では確かに優れています。

これらは新たに導入される哨戒艦とともに、日々の警戒監視任務で活躍する一方、有事ではより対応能力の高い汎用護衛艦が欠かせません。

いまの護衛隊群は高性能な大型艦がそろっているとはいえ、「むらさめ型」の旧式化が進み、2020年代後半からは「あさぎり型」「あぶくま型」が毎年退役していくなか、その先をどうするのかを検討せねばなりません。

流行りのコンパクト・マルチ能力を志向するかもしれませんが、汎用護衛艦である以上は中途半端な性能ではなく、優れた総合能力が求められます。

海自としても護衛隊群の現体制(32隻の大型護衛艦)を質・量の両方で維持すべく、新しい汎用護衛艦は省人化と多目的能力を盛り込みながらも、フリゲートとは一線を画するものになるでしょう。

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