信頼性抜群のドイツ産
ドイツは第二次世界大戦で多くの戦車を作り、その系譜を戦後も受け継ぎながら、レオパルト・シリーズを開発しました。
西ドイツは冷戦の最前線にあったため、ソ連率いるワルシャワ条約機構を迎え撃つべく、1965年には戦後初の国産戦車「レオパルト1」を登場させます。ところが、ソ連戦車のさらなる進化を受けて、「レオパルト2」に着手しました。
- 基本性能:レオパルト2A7(最新型)
重 量 | 67.0t |
全 長 | 10.93m |
全 幅 | 3.74m |
全 高 | 3.03m |
乗 員 | 4名 |
速 度 | 時速70km |
行動距離 | 約500km |
兵 装 | 55口径120mm滑腔砲×1 7.62mm機関銃×2 |
価 格 | 1両あたり約15億円 |
レオパルト2は1979年に配備が始まり、主流の105mmライフル砲ではなく、120mm滑腔砲を搭載しました。そして、他国より先に複合装甲を採用するなど、当時の最先端を歩む戦車でした。
50トン超えの車体にもかかわらず、強力なエンジンを導入した結果、異例の高機動力を獲得しました。また、照準システムはレーザー測定と赤外線暗視を使い、高性能な安定装置のおかげで、起伏の激しい地形を走りながらも、目標を正確にとらえられます。
防御面でいえば、セラミックスとチタンの複合装甲を組み込み、防護性能はレオパルト1と比べて向上しました。同時期の戦車と比較した場合、日本の74式戦車のような曲線・傾斜はなく、直面的な設計になっています。
これは砲弾技術が進化したところ、従来の避弾経始が通用しづらくなり、他の西側戦車も追随した事実をふまえると、防御面でも先見の明があった形です。
結果的として、十分な火力と優れた射撃性能、機動力、防御力を持ち、ソ連戦車と十分に渡り合える能力を確保しました。
余りを輸出して欧州標準に
ドイツだけで2,100両以上が生産されたものの、冷戦終結とソ連崩壊にともない、ドイツ本国では軍縮機運が高まり、今度は大量の余剰車両が生まれます。
余った戦車をオランダやスウェーデンに安く売り、それが高い評価を獲得した結果、一転して兵器輸出における目玉商品になり、いまや「欧州標準戦車」と称されるにいたりました。
世界中で売れている(出典:ドイツ連邦軍)
レオパルト2は基本設計の拡張性が高く、中古品を安く買ったとしても、改良しやすいと評判でした。さらに、輸出先の要望に応じたり、アフター・ケアを充実させるなど、その営業努力がリピーター客につながりました。
いまやポーランド、ギリシアなどの欧州各国だけでなく、カナダ、トルコ、インドネシア、チリなど20カ国以上で使われるベストセラーです。
実戦投入と後継のゆくえ
近年はロシア軍の侵略を撃退すべく、ウクライナに供与されたことで話題になりました。度重なる要請を受けて、最終的にドイツやポーランド、スペイン、カナダ、フィンランドなどから約100両が提供されました。
同じレオパルト2でもバージョンが違うとはいえ、どれも本来はソ連戦車(ロシア)を想定しているため、ウクライナ軍にとっては期待の兵器でした。
しかしながら、2023年の反攻作戦では撃破車両も多く、すでに50両近い損害を出しています。航空優勢がない以上、あらかじめ敵の防衛線を叩けず、砲撃と地雷、自爆ドローンによる被害が相次ぎました。
ただし、これら損害は回収・修理可能な車両を含み、乗組員の多くは脱出に成功するなど、その生存性の高さを証明しました。
撃破されたウクライナ軍のレオパルト2
そんなレオパルト2ですが、配備から40年が経つにもかかわらず、「レオパルト2A8」という最新型が登場しました。
これは赤外線サーモグラフィ装置、エアコンを追加したり、加速性能と防護力をさらに強化したバージョンですが、その代わり価格はハネ上がり、約45億円になりました。
量産体制さえ整えば、さすがにコストは下がるとはいえ、インフレにともなう材料費の高騰は変わらず、以前のような値段では買えないでしょう。
なお、長らく停滞していた後継の開発も進み、いまのところラインメタル社(独)が発表した「KF-51 パンター」が有力視されています。

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