ドローンにも使える？87式自走高射機関砲の性能と射程

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高性能な自走対空砲

戦車は地上では強さを誇りながら、空からの攻撃にはめっぽう弱く、防空能力の低い部隊は航空攻撃にさらされてきました。

たとえば、第二次世界大戦でドイツ軍は欧州を席巻しながら、その戦車隊は戦争後期には航空機の餌食になりました。そこで地上部隊の防空能力を強化すべく、「対空戦車」という車両が生まれました。

すでに対空砲というのがありましたが、この対空砲を移動できるように車両に乗せたのが対空戦車、すなわち自走対空砲です。そして、携帯式対空ミサイルが登場する前は、この自走対空砲が地上部隊にとって欠かせないものでした。

それは陸上自衛隊も変わらず、発足後しばらくはアメリカから供与された自走対空砲を使い、その後は「87式自走高射機関砲」を開発しました。

車体の左右にスイス・エリコン社の機関砲を備え、対空レーダーが起き上がる姿から「ガンタンク」の愛称で知られる87式自走高射機関砲は、高評価だった西ドイツの「ゲパルト自走対空砲」を参考に作られました。

砲塔後部にある索敵用と追尾用のレーダーは約20kmのエリアをカバーするとともに、それぞれを使い分けることで、射撃と目標捜索を同時に行えます。ほかにも、画像カメラとレーザー、赤外線を使った光学追尾装置をバックアップとして持つため、電波妨害下でも射撃可能です。

偽装を施し、レーダーを起動させた状態（出典：陸上自衛隊）

両脇の35mm機関砲は、約4,000メートルの有効射程と毎分1,100発の発射速度を誇る高性能なもので、ともに300発以上を装填してます。この35mm弾はミサイルや攻撃ヘリを撃墜できるだけの威力を持ち、必要であれば対地攻撃にも使えます。

今も自走対空砲としては高性能を誇る陸自ガンタンクですが、1両あたり約14億円の価格が災いして、配備数は52両に留まりました。陸軍重視のドイツとは一概に比較できませんが、これは参考にした同国のゲパルト自走対空砲のわずか1/10ほど。

この調達価格の高騰は、自衛隊しか納入先がない国産装備品には必ず付きまとう悩みで、ガンタンクも例に漏れずでした。

射撃する87式自走高射機関砲（出典：陸上自衛隊）

生産された52両のうち、ほとんどが北海道に配備中ですが、車載型・携行式の対空ミサイルが普及するにつれて、自走対空砲そのものが時代遅れとの認識が強まりました。

最近は歩兵が携行式対空ミサイルを持ち、もっと重層的な防空網を構築すべく、海外では自走対空砲に対空ミサイルを追加するなど、それなりの改修をしてきました。

しかしながら、87式自走高射機関砲に近代化改修の予定はなく、その後継についても案は出ていません。

それゆえ、陸自ガンタンクはいずれ消える運命にあるものの、自走対空砲としては高性能なのは変わらず、最近は機関砲が対ドローンの手段として再注目されています。

安価な自爆ドローンに対して、高価な対空ミサイルを使うのは割に合わず、自走対空砲の方が費用対効果がよいわけです。中距離・近距離の防空ミサイルもあるとはいえ、その数は決して十分とはいえず、自走対空砲は最後の砦としてまだ活用できます。

さはさりながら、87式自走高射機関砲は基本設計が古く、小型ドローンを撃墜する弾種には対応していません。したがって、大きいドローンや巡航ミサイルには対処できますが、自爆ドローンのような小型機には能力不足です。