スウェーデンのバズーカ
歩兵向けの対戦車兵器といえば、アメリカの「ジャベリン対戦車ミサイル」、ドイツの「パンツァーファウスト3」などが有名のなか、人気度ではスウェーデンの「AT4」も負けておらず、アメリカを始めとするNATO諸国で運用中です。
- 基本性能:「M136 AT4」対戦車無反動砲
| 重 量 | 通常版:6.7kg AT4-CS:8kg |
| 全 長 | 1.02m |
| 口 径 | 84mm |
| 要 員 | 1名 |
| 速 度 | 通常版:秒速290m AT4-CS:秒速220m |
| 射 程 | 有効射程:300m 最大射程:約2,000m |
| 価 格 | 1発あたり約20万円 |
スウェーデンは最近まで中立国だったものの、現実路線に基づく「武装中立」を選び、国産の兵器開発に取り組んできました。その結果、グリペン戦闘機のような高性能兵器を生み、AT4も同じサーブ社が開発しました。
AT-4は84mmの対戦車無反動砲ですが、その名前は何の略称でもなく、口径をそのまま英語読みしたものです(Eighty-Four→AT4)。
システムの軽量化に加えて、発射時は同量のエネルギーを後ろに放ち、反動を相殺して抑え込み、兵士ひとりで運用できるようになりました。
一方、再装填は想定しておらず、製造時に装填された弾薬しか発射できません。このように使い捨て式とはいえ、複数本を用意すれば連続射撃できるほか、数種類の弾薬を選択可能です。
たとえば、成形炸薬弾は厚さ45〜60cmの装甲を貫き、対人炸薬弾は約1,000mの有効射程を持ち、遅延信管で屋内爆発するタイプの場合、市街戦で有効な兵器になりました。
最近の主力戦車だと厳しいものの、装甲車と軽戦車は撃破に追い込み、建物内の敵を一掃する威力はあります。ただし、NLAWのようなミサイルとは違い、無反動砲の弾薬は誘導機能がなく、目標に接近せねばなりません。
それでも、シンプルな構造で簡単に使えるうえ、目標に適した弾種も選べるため、アメリカ、イギリス、ポーランドなどのNATO諸国の目に留まり、手軽な対戦車装備として運用されてきました。
しかも、ミサイルより圧倒的に価格が安く、財政的な余裕がない国にとっても、わりと購入しやすい兵器です。
このような利点をふまえて、ロシアのウクライナ侵攻ではアメリカ、スウェーデンが2万発以上を送り込み、ウクライナ側の継戦能力を支えました。ロシア戦車と装甲車を待ち伏せたり、市街地における掃討作戦で役立ち、現地歩兵の頼れる火力になっています。
爆風を減らした改良型
しかし、AT4は無反動砲ならではの欠点を持ち、それが発射時に後方へ排出される爆風、いわゆる「バックブラスト」です。この爆風で反動は相殺できるとはいえ、周囲の人間を巻き込み、射手の火傷にもつながってきました。
また、屋内・陣地内では射撃ができず、この制約は市街戦で問題視されました。

この問題を解消するべく、新たに「AT4-CS」という派生型をつくり、密封した塩水を飛散させながら、爆風の吸収・減衰に成功しました。ちなみに、「CS」とはConfined Spaceの略であって、日本語では狭い空間を意味します。
いずれせによ、通常型よりは屋内で使いやすく、爆風の抑制は射撃位置の露呈を防ぎ、射手の安全性は大きく高まりました。


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