首都圏を守る「頭号師団」
時代や国を問わず、首都の守りには精鋭部隊があてがわれますが、陸上自衛隊も例外ではなく、第1師団がその役割を担います。
その番号は陸自の各師団・旅団の中で最も若く、旧日本軍の第1師団と同様に「頭号師団」とも称されるなか、東京を中心に茨城や山梨、静岡までの1都6県を担当しています。
- 基本情報:陸上自衛隊・第1師団
人 員 | 約6,500名 |
創 設 | 1962年1月18日 |
司令部 | 東京都 練馬駐屯地 |
担当範囲 | 東京、埼玉、神奈川、千葉茨城、山梨、静岡 |
駐屯地 | 練馬、朝霞、立川、大宮、板妻、駒門、北富士 |
戦 力 | 3個普通科連隊 1個偵察戦闘大隊 1個高射特科大隊 1個特科隊 1個飛行隊 など |
第1師団は3つの普通科連隊(歩兵連隊)を中心とした戦力を持ち、これまでは担当エリアの防衛に専念する「地域配備型」の師団でした。
しかし、悪化する安全保障情勢に対応するべく、第1師団も機動運用することが決まり、いまでは他地域にも出動する可能性のある部隊になりました。
ただ、南西諸島方面での有事となれば、同地域を担当する第15旅団や日本版海兵隊の水陸機動団が主戦力となるほか、ほかの師団・旅団を差し置いて、第1師団をわざわざ首都防衛から引き抜くは思えません。
次に、編成・装備について詳しくみていきましょう。
まず、配下の普通科連隊は5個中隊と通常よりも多く、このあたりは首都防衛を担う部隊として優遇されている感があります。一方、改編で師団唯一の戦車大隊が廃止されたため、現在は代わりに16式機動戦闘車を運用中です。
そして、東京に駐屯しているだけあって、天皇陛下の即位や観閲式などの国家行事には自衛隊の「顔」として参加するケースが多いです。したがって、第1師団は陸自唯一の礼砲部隊(第1特科隊)を持ち、天皇陛下の即位式典や故安倍晋三の国葬では専用の105mm榴弾砲で礼砲・弔砲を行いました。
では、気になる強さはどうなのでしょうか?
首都防衛を担うにもかかわらず、戦車すらないのは心許ないかもしれません。
ところが、首都圏では都市戦闘(市街戦)になりやすく、鈍重な戦車よりも舗装道路を快走する軽装甲機動車や16式機動戦闘車の方が適任ともいえます。
また、首都・東京を守るだけあってか、第1師団の所属隊員は他の普通科連隊よりも「質」が高いそうです。
たしかに、戦力的には北海道の第7師団には敵わず、隊員個人でも第1空挺団にはおよびません。それでも、首都防衛を任された栄えある「頭号師団」というプライドの下、技能・知能ともに優れた歩兵が集まっているのが特徴です。
公安の監視対象?
ところで、首都・東京に駐屯しているこの頭号師団が、あの公安警察からマークされているという話があります。
公安といえば、左翼勢力や新興宗教を監視するイメージが強いですが、じつは自衛隊によるクーデターも警戒しているのです。
「現代日本でクーデター?」と思うかもしれませんが、戦前の二・二六事件や宮城事件を考えると、首都近くにいる軍隊が警戒されるのは仕方ありません。
クーデターが政権や国家中枢の早期制圧を目指す以上、首都の駐屯部隊を動員するのが定石となります。二・二六事件を起こした旧第1師団とは関係ないとはいえ、公安が同じ首都駐留部隊の陸自・第1師団を警戒するのは当然でしょう。
戦後についても、1970年の三島事件では市ヶ谷駐屯地(当時は第1師団の第32普通科連隊が駐屯)が狙われたり、あのオウム真理教も第1空挺団の家族を人質にして取り込もうとしました。
余談ですが、アニメ「パトレイバー」でも陸自・第1師団の部隊が治安出動という名目で首都中枢を占拠していました。このように首都防衛の部隊は、どうしても潜在的なクーデター要員ともみなされるわけです。
しかしながら、いまの自衛隊が戦前のように政治介入するリスクは限りになく「ゼロ」に近いといえます。
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