北海道限定の貴重な火砲
陸上自衛隊の普通科部隊で頼りになる大火力といえば、けん引式の120mm重迫撃砲が筆頭候補にあがるなか、これを自走化した「96式自走120mm迫撃砲」というのも存在します。
ただし、こちらは残念ながら北海道の第7師団でしか見られまず、その生産数もわずか24両というレア装備です。
- 基本性能:96式自走120mm迫撃砲
重 量 | 23.5t |
全 長 | 6.7m |
全 幅 | 2.99m |
全 高 | 2.95m |
乗 員 | 5名 |
速 度 | 時速50km |
行動距離 | 約300km |
兵 装 | 120mm重迫撃砲RT×1 12.7mm機関銃×1 |
価 格 | 1両あたり約2.2億円 |
この車両は「自走120モーター」の呼び名を持ち、キャタピラ式の装甲車に120mm重迫撃砲を載せたものですが、92式地雷原処理車などの既存車体を流用したおかげで、その開発期間を2年に抑えました。
120mm重迫撃砲は後部に搭載されており、性能的には他の普通科で使われているものと変わりません。
実際に運用するときは、まずは天井と後方のハッチを開き、後ろ方向に発射します。射撃自体は2名体制で行い、左右45度まで旋回できる回転台を使いながら、方角調整などをする仕組みです。
車内には約50発の弾薬が格納されており、自走化により射撃準備と陣地変換は容易になりました。したがって、高機動車でけん引する通常型と比べて、圧倒的に生存性が高く、その威力とともに現代砲兵戦でも十分に活躍できる見込みです。
少し話は逸れますが、機動戦士ガンダムで1年戦争直前を描いた「THE ORIGIN」という漫画・アニメシリーズがあります。その劇中で士官学校時代のシャアとガルマたちが、連邦軍相手の演習、さらに駐屯地襲撃時に使ったのが自走迫撃砲でした。
もし見たことがあれば、同じイメージを持ってもらえると分かりやすいでしょう。
見送られた増産と不明な後継
機動力・生存性に優れていながら、やはり惜しまれるのは、少数しか生産されず、北海道限定になった点です。
なぜ第7師団なのかといえば、彼らが陸自唯一の機甲師団であるうえ、所属する第11普通科連隊も89式装甲戦闘車などで完全機甲化されているから。
この連隊は普通科としては最も装備に恵まれていて、迫撃砲も従来のけん引タイプではなく、自走化・装甲化による随伴能力が重視されました。
ハッチを開いた状態(出典:陸上自衛隊)
同連隊はその前も自走迫撃砲を使っていたため、新しい自走120モーターの導入は問題なく進み、現在も約20両が重迫撃砲中隊に配備されています。
ほかにも、同じ北海道を守る第2師団への配備計画があったものの、こちらは取りやめになり、増産も見送られました。新規調達と後継についても、特段何も動きはなく、いまも調達されているけん引タイプとは対照的です。
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